春は出会いと別れの季節 島の別れ

 五島列島だけではないが、離島経験の無い人には「そんな見送りが今でも有るの」と聞かれる。人情の厚い離島では今でもこうした別れがある。五島列島の風物詩、島の別れだ。(03/30/2010)

小値賀港にて

 野暮用を済ませて、宇久島の平港ターミナルまで来て見ると、宇久中学校の生徒達がブラス演奏をしていた。前に立っている紳士が転任される先生だろう。ひとしきり演奏が続いてフェリーが港に入ってくる頃、次々に見送りの人達が集まってくる。

 いよいよ乗船が始まると、慣れた同僚の人だろう、ロープを持って逸早く乗船していく。五色のテープを引き上げて手摺に結び付けて準備が出来たところに、主役の先生が登場。

 始めは照れくさそうにしていた先生も、出航と同時に伸びて行くテープと、それを握って手を振る教え子等を見ていて感極まったようだ。

 宇久平の港を離れてからも、小さくなっていく島影を、じっと見つめていた。私も四半世紀前に福江島を離任した時を思い出した。

 他人が送られているのを見ていたときは、恥ずかしいなぁと思っていたのだが、いざ自分が送られる時に成ってみると、もう島に帰る場所が無くなったとでも言うような寂しさを感じたものだ。

 そして、次の寄港地である小値賀港でも島の別れが繰り広げられている。

 キリシタン哀史と何も係りは無いのだが、「五島へ五島へと皆行きたがる。五島やさしや、土地までも」と、ふと口をついて出てきた。そんな島の別れだ。

fwd-net長崎・諫早へのリンク

inserted by FC2 system