スタンプラリー主催者の皆様へ参加者からの要望

参加者から喜ばれるスタンプラリーの運用とは?

 温泉やグルメのスタンプラリーに参加して、概ね楽しい思いをする事が多いのだが「こんなスタンプラリーは止めた」と思ったり「こんな無駄遣い」とか「こんな事で期間中続けられるのかなぁ」と疑問を感じるスタンプラリーも少なからずある。

 私一人が何を言っても「ゴマメの歯軋り」に過ぎないが、もしかしたら楽しめて効果の上がるスタンプラリーが増えるかもしれないとの願いを込めて述べてみたい。

□スタンプラリーの運営者に「こうあって欲しい」と思うことなど

■目的が明確でないスタンプラリーは失敗する

 何のために人・物・金を掛けてスタンプラリーをするのだろうか?観光協会や地域の商工会などが主催するスタンプラリーであるならば地域の活性化や観光客の誘致若しくは滞在時間の増大、リピーターの確保など地域に対するメリットを求めて開催するのが当然の姿だ。

例:1)エリアの集客・滞在時間の増大・リピーターの確保が目的

例:2)特定のグループや業種及び店舗の利益を目的

 上記の例:2)については、費用対効果も測定が安易で専門のアドバイザー等も多いので今回の要望には関連が少ない。例:1)のように対象エリア全体を対象としたものについて考えてみたい。したがって目的は下記のようになる。

【スタンプラリーの目的:対象エリアの交流人口・滞在時間を増やす事を目的とする】

 上記の目的が有るのなら、当然のこと対象エリア内にPRできる観光資源が無くては適わない。例えば温泉があるとしよう。その温泉は他所の温泉と差別化できるものが有るだろうか?ただ温泉があって宿が有り、美味しい物が有るだけでは日本中どこにでもある。(無いところも有るが)

・源泉掛け流し・加水・ろ過・循環無の本物の温泉がある。(全部でなくても一部には有る)

・歴史的なバックボーンが有る。(史実でも伝説でも良い)

・泉質や湧出環境に顕著な特徴がある。

・泉質・源泉数・宿泊施設・立ち寄り湯に多様な形態がある。

・その他

 上記の内一つでも他の温泉地と差別化できる要素が有れば温泉スタンプラリーの最低条件はある。これがグルメのスタンプラリーであるならば素材は地産地消で無ければならない。その土地に来てこそ食べられる物でなくては価値が無い。ただ旨ければ良いという物ではない。(不味ければ話にならない)

■スタンプラリーは永続性が無ければならない

 上記の目的を達成するのに期間が終われば無くなってしまう企画では意味が無い。補助付・紐付きのイベントと言いたくなるスタンプラリーは一度達成してしまえば繰り返し参加したくなる要素が欠如している。(ことが多い)

 具体的な例を挙げて大変申し訳ないが「阿蘇くじゅう観光圏が実施したスタンプラリーを挙げてみる。先ずはプレイベントとして行った平成23年1月からの阿蘇温泉郷湯ごもりキャンペーンの際は、三ヶ月間の短期勝負で有った為に継続性の欠如したイベントで良かったが、同年12月から始まった「冬阿蘇湯ごもり祭」では、前回不評であった宿泊しての入湯が対象から外れていたのが、今回は宿泊者を対象とした「泊まり湯の達人」と湯巡りを対象とした「めぐり湯の達人」として開催している。また各々の温泉地毎のサプライズも用意されていて受け入れ側の対応の変化も感じられる。

 交流人口の増大を目的としたスタンプラリーなら、前回のパターンより今回の形が望ましい。二度目だからこそ改善が出来ている例である。

 また永続性という面では、この阿蘇温泉郷のキャンペーンも課題がある。「湯ごもりの達人」とか「めぐり湯の達人」更には「泊まり湯の達人」というほど「達人」という言葉を使うのであれば今後も継続していく姿勢が求められる。

 達人にランク付けをするなりして、また続けようという意識付けが肝要である。

■スタンプラリーに必要以上の経費を掛けてはいけない

 交流人口の増大は地域に恩恵をもたらすが、具体的に経費負担をする者にとっては費用対効果が判りにくい。これが上記の永続性というか継続性に関わって来る。

 上記の例で言えば、達人の認定に経費を掛けてはいけない。可能であればスタンプラリーの台紙だって無償で配る必要はない。広報すべき内容はポスターで良いし、ネットでPRすれば事足りる。良い例が別府八湯温泉道の運営方法だ。

 スタンプラリーの方法と台紙はスパポートという名称で販売している。段位の認定や記念品は認定料として参加者から徴収。運営は手の掛かる部分は任意団体である名人会が行い。名簿管理や段位認定は観光協会が有償で実施。こうしているからこそ費用対効果が明確でないスタンプラリーを継続して実施が出来る。

 参加者は楽しんで、いわば遊びで参加しているのだから経費が掛かるのは当然だと考える。旅費・宿泊費・現地費用を考えればスタンプラリーの経費負担など些細な問題。(あくまで参加者当人にとって)

 必要な経費をスタンプラリー自体から捻出するからこそ永続性が保たれ、参加者はリピーターとなって何度も通う事になる。

■経費の掛からない事は大盤振る舞いでも良い

 別府の例を続けるなら、初段から始まり88湯で名人となり、その後は名人を11回重ねるごとに永世名人→名誉名人等と称号が与えられる。称号には経費は掛からないが、参加者にとっては楽しみになる。

 阿蘇の例でいうなら。応募があるスタンプ5個・10個・12個に名称をつけて、阿蘇美人(遊び人?は失礼か?)や師範代・達人等として、希望者だけにでも認定状を出すと良い。事務局で直接申請する場合は無償でもいいが、郵送するなら送料+αを負担してもらう。

 達人を何度も重ねるごとに達人としての順位を上げていき、リピーターとなるべく誘導すべきである。段位や称号など経費の掛からない事は大盤振る舞いでいいじゃないか。

 勿論、観光局や全国商工会等の補助が有るなら豪華な賞品を検討するのも参加者としてはありがたいが、継続性が無ければ地元への波及効果は期待できないのではないだろうか。

■リピーターを放してはいけない

 達人でも名人でもマイスターでも良いが、この参加者を一度で逃しては成らない。なんらかの事務局を立ち上げて名簿管理を行うべきだ。事務局と言えば経費を考えるだろうが、顧客管理を行っていると解釈すべきで、その担当者を事務局にするのである。

 対象エリアの一部地域や店舗がキャンペーンなりイベント等を行う際には、この名簿を活用し「事務局からのお知らせ」を行うのだ。リピーター候補者や完全なリピーターは、このダイレクトメールを喜び、更には行動に移す可能性が高いのだから、イベント等の内容さえ良ければDMの効果は高い。またDMの経費も参加者の希望でDMかメール対応かを確認しておけば更に経費は削減できる。

 個人情報の保護の観点からスタンプラリーなどの応募時の個人データは賞品の発送以外には使用しないと明記された物も多く見かけるようになったが、自らが対象者となった事務局に個人情報を置くのは当然であり、その対象となるイベントや情報が届くのは歓迎する筈である。

 地域の情報発信としてHP・ブログにtwitter・FB等を活用する事は誰でも考えるが、直ぐに更新が無くなる。なぜなら更新すべき内容が無いからだ。しかしこのリピーターの事務局は違う。地域のイベントが無いときでも、参加者の昇段情報や参加者同士の情報交換が行えるから更新内容に困る事は無いからだ。

■スタンプラリーの有り方はこうあるべきだ

 くどくどと述べてきたが、ここまで述べてきた事を纏めて言えば下記のようになる。

・イベントの為のスタンプラリーではなく目的を明確にする。

・永続性があり即効性は無くとも地元に浸透する内容で無ければならない。

・地域の特性と合致する内容でなければならない。

・継続できないような経費が掛かる内容にしてはならない。

・良い意味で遊びの要素を持ち得る内容でなければならない。

・ラリー参加者は優秀なリピーター候補で有る事を忘れてはならない。

 並べてみると当たり前の事ばかりだが、これを忘れているのではないかと思うスタンプラリーが現実に有る。鳴り物入りで大きな予算を掛けてスタートしたものが、いったいあれはどうなった?というものを目にすることもしばしばある。

□スタンプラリー参加者の立場から「これは頂けない」と感じたものから

■スタンプラリーの関係者への周知やグッズの配布は事前に完了する

 嘘かと思うかもしれないが公の補助金などが入ったイベント関連のスタンプラリーで散見されるのが実情。ラリースタート時点では対象施設の関係者はラリー自体を催される事も知らない。または開催される事は知っていてもポスターやリーフレットの配布が遅れていて参加者が来たときには「これはナニ?」状態である場面に遭遇する。

 関係者に聞けば「組合幹部だけが知っているのだろう」とか「費用負担が無いから関心も無い」という驚くべき実態が見えてくる。とてもじゃないがスタンプラリーを継続する気は無くなってしまい途中でスタンプカードを放棄した事もある。

■スタンプ一つ作るのも配慮が要る

 良くあるのが店舗毎に押すスタンプが共通であること。そんな事は問題じゃないと思うのが自ら参加者になった事の無い人達だ。参加者は店舗毎、地域毎に異なるスタンプが有るほうが単純に楽しいし、同じスタンプを使用しているマイナス面として、参加者に迎合する店舗の担当者が同じスタンプだからと他所の分まで押してしまうなんていう参加者の意欲を殺ぐ場面に出くわす事もある。

 自らスタンプラリーに参加したことが無い人には判らないだろうが、こんな不正があると達成感は得られない。そのまま放棄したくなるのが「まともな参加者」なのだ。

 スタンプを個別に作る費用が無ければ店舗の検収印や日付印などを使ってもらったほうが楽しめるし、店舗側も色々な企画に参加しているとスタンプの管理も大変だし、他の企画で使用中のスタンプでも物によっては楽しめる。

■期間が長いのとレスポンスが悪いのは違う

 期間の長い例えば二年間のスタンプラリーだとする。リーフレット配布や告知も完了してスタートした場合に主催者の思惑と違って、僅か数日・数週間で完了してしまう参加者が出てくる。「ラリー完成者にマイスターの認定証を出す」等と決めてあれば、その認定書の1を狙う者も居る。

 そして申請書を提出しても主催者側は何も準備しておらず、副賞の内容が決まってないからと半年・一年も経ってから認定証と副賞が届いたケースがある。参加者は立派な副賞や豪華な賞品よりも認定手続きがスムーズで一週間も経たないうちに認定書が欲しいのだ。

 勿論の事、予算が潤沢に有るなら豪華賞品も良いだろうが、上記のレスポンスの良さが無ければ良いスタンプラリーとは言えず、リピーターを逃す原因にもなってしまうのである。

■同じ予算を掛けるなら配慮が欲しい

 湯巡り関係の副賞等でタオルや湯桶等の湯道具を頂く事がある。これは間違いなく嬉しいのだが、Tシャツや帽子等はサイズが合わないと唯の飾りになってしまう。サイズ指定などの配慮が有るか無いかで印象が大きく違う。

 何事でも同じだが、お金を使うより気を使うべきだと感じる。副賞を後になって決定して確認も無にサイズの合わない物を送る等は愚の骨頂。

■主催者側の論理でルールを作られると辛い

 スタンプラリーの主催者側の全ての施設を回るスタンプラリーがよく有る。運営をされる側にとっては関係者全てに公平にとの配慮だろうが内容によっては参加者が意欲を失うのもある。

 食のスタンプラリーで店舗を回る際に飲酒を前提とした企画なら別だが、指定の飲食店がスナックや居酒屋で酒を飲まない参加者にとって辛い場合も有るし店側も食事だけだと無愛想になる店舗もある。店舗にも参加者(未成年者や飲酒の習慣の無い人)へも配慮が欲しい。

 湯巡りの場合でも、敢えて修行とでも銘打って塩素まみれの湯から野湯まで指定するなら別だが、湯巡りを楽しませようというなら施設も選んで頂きたい。どうしても各種の施設を網羅するなら一部を回るだけのランクから全てを回るものまでランク分けしてしかるべきだろう。

 肝心な事は、参加者が「このルールで楽しめるか?」を考えながら企画をすべきだという事だ。

別府八湯温泉道表泉家 第11代永世名人

九州温泉道 2代泉人

奥豊後温泉郷マイスター

人吉球磨天下湯一

安元 禪透

〜スタンプラリーの主催をする方が一人でも読んでくれればと祈りながら〜

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