奈留神社(五島市奈留町)

 17年ぶりに奈留島に上陸。一泊二日の小旅行で島内を巡った。ここは奈留島第一の奈留神社。奈留港ターミナルの対岸に鎮座する。(12/04/2008)

奈留神社拝殿

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【祭神】 木花之佐久夜毘賣命 

【合祀】 経津主命・豊玉毘古命・豊玉毘賣命・玉依賣命

【例祭】 旧9月9日 現在は旧暦9月9日前後の日曜日

【創建】 慶雲元(704)年以前といわれる

 最初の鎮座地は奈留島東南端の鳴神鼻で、その山頂近くに石の祠が祀られ鳴神(なるかん)と呼ばれていた。この神社には、木花之佐久夜毘賣命に関わる一夜妊娠の伝説がある。

 大山祗神の娘で絶世の美女と名高い木花之佐久夜毘賣命は、神武天皇の曾祖母にあたるが。その事は少し置いて、話を続けよう。

 前段は古事記の話と共通するが、これは奈留島に伝わる伝承である。

 遠い昔、今の鹿児島の笠沙に木花之佐久夜毘賣命という一人の美女が居た。やがて身分の尊いお方に請われて妃になり、一夜契りをお結びになった。

 ある日、サクヤヒメは自分は身籠っていて、お産の日が間近に迫っている事を告げた。すると尊はお産が余りに早いので疑って聞いた。

「いや待てよ。それは本当に私達の子か」

 するとサクヤヒメは大変に怒り、恨んで身を投げようと小船に乗り、笠沙の岬より沖に漕ぎ出した。そして、潮の流れ(対馬海流か?)に身を任せ、幾日も波に揺られながら漂着したところが鳴神鼻であった。

 サクヤヒメはこの鳴神鼻に這い登り、雨露しのぐ小屋を建て、そこでお産をした。

 ある日、産後の汚物を洗うため、海辺に下りていたところ後産があり、その血が岩に滴り落ちて赤色の線となり、それが今でも残っていると伝えられる。その後、再び汚物を洗うため海辺に下りたが、産後の疲れのためつい足を踏み外して海中に転落し、引き潮時の速い流れに引き込まれてしまった。

 沖の方へと流されていくサクヤヒメは、残してきた赤子のことを思うと気が狂わんばかりであった。あらん限りの力を振り絞り、なんとしても岸に辿り着こうと懸命に泳いだ。そして、神の力を持って潮流を奈留湾の方へ流れるよう祈り続けた。すると祈りが通じたのか漸く潮流が逆流して湾口へ向かうことが出来た。が、時既に遅く力尽きて遂に息絶えてしまった。

 やがてサクヤヒメの身体は潮流に流され、弁天島を七回廻って奈留神社下の死体となって漂着した。その後、現社地に葬られることになったと伝えられている。

 この古事に因んで旧9月9日の例大祭では、神事として神輿を乗せた船が弁天島を七回(現在は一回)廻っていた。また、鳴神鼻の引き潮の最中に、一時潮流が湾口に逆流する潮路があり、漁船などは引き潮の最中でもこの逆流に乗って湾口に入港できると言う。

 この逆流の潮を「鳴神鼻の中良返しの入潮」(ながれがわし)といい、木花之佐久夜毘賣の神事物語として今も伝えられている。

五島市奈留町浦郷奈留神1572番地

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